「お客様の状況を知る」ということを考えてみる
この説では、「お客様の状況を知る」ということを考えてみることにします。まず、顧客分析の考え方ですが、私は次のように考えています。他にも考え方はあると思いますのであくまでも私見です。
企業の利益はお客様から得られています。当たり前ですが、どんなに優れた商品もお客様に支持されることなくしては、業績には結びつきません(支持してもらえなければ購買もされないはずですから)。さらに、今後の日本経済を見てみるなら、人口という経済のエンジンは今後は回転数を高めることはなく停滞することになると予測されています。
このような中で、企業の業績を高める、または維持し続けていくためには「リピートを増やす」「お客様を逃さない」ことを重視する必要があるのではないでしょうか。そう考えると大事なのは、新規で獲得したお客様のお店への愛顧度(ロイヤルティ)を高めて、浮気をしないようにしてもらう。他のお店より自店をより利用していただくということになります。このためには、お客様の様子をよく理解する、優良なお客様にはより高いサービスを提供して高い満足を感じてもらうということが必要です。
ところで新規の顧客を獲得するためのコストは、顧客の維持コストに比べて6倍から8倍かかるという経験則が知られています。この数値の正しさは別にしても、顧客を維持することは新規の顧客を獲得するよりもはるかに効率が良いことは確かなようです。お客様を自店にとってより大切なお客様になっていただけるようにお客様に働きかけ続けることが今後の事業には大切なのだと感じています。
そのための出発点は、良い意味で自店のお客様をよく理解する。具体的には、時点にとって優良なお客様とそうでないお客様を区分することがまず必要です。
例えば、全体の20%のお客様が売上高の80%を生み出しているという経験則があります(俗にいう2:8ルール、パレートの法則です)。これが正しいとすればこの20%がどのようなお客様なのかを知りたいと思いませんか。そして、この20%のお客様が他店に流れないようにしたいと思いませんか。顧客分析はそのベースラインを提供します。
この考え方は、お客様の顔が見えるような販売方法をしているお店には特に大事です。
≪分析の方法≫
1.デシル分析
顧客を一定期間における購買金額の高い順に10層に分割して、顧客構成と売上高構成の関係を分析する手法。最も簡単な顧客分類の方法です。10分割して分析を行うのでデシル(10という意味)分析と呼びます。
やり方は、①売上高を10分割に均等割します。②10の売上高の層に対応させてお客様をマッピングします。
この方法は、売上高のみでお客様の重要度を決定しようとしています。 他の要素を組み込むことが必要な場合には適しませんが、単純に顧客を区分することができる方法です。
この例では、グループA~Cで年間売上高の8割を達成しています。グループA~Cに対して販売促進を行うと効率的であることが分かります。
販売促進としては、売上高の80%程度を目安にどのような個々のお客様が売上に貢献されているか、どのお客様がどのグループに属しているかを見て、グループ毎の販促方法を決めることになります。
2、RFM分析
最終購買日 (Recency )・購買頻度 (Frequency )・購買金額合計 (Monetary )をポイント制にして顧客のランク付けを行う。
POSを利用するとこの情報は簡単に収集することが可能です。
やり方は、最終購買日・購買頻度・購買金額合計で次のような表を作ります。3つについて一定の基準でもってポイントを付与します。そのポイントの合計点を用いてランクを設定します。ポイントの付与方法は、いろいろあります(例:ボブ・ストーン、ベイヤー、リュグレンなどの採点法があります)ので自社に合った方法を採用してください。
デシル分析もRFMもお客様に対するサービスを考える前の、お客様をグループ分けする方法です。お客様をグループ分けしたからといって顧客分析ができたわけではありません。
デシル分析もRFMも、「過去データの分析でしかない」「そこに至るまでの過程が予測できない」「顧客の特性が正しく反映されているかが疑問」「だれが優良顧客になりそうな人かは判別できない」などの弱点があります。これは最低限の出発点です。
個々のお客様そどのように見るのかについては、例えば「03.データ分析が改善活動に生かされていますか?」で紹介した相関分析などの手法もあります。相関分析を個々のお客様に対して実施したら、とても大変な作業になりますでしょうし、分析結果がぐちゃぐちゃでなんだかわからないということにもなるでしょう。その場合は、①層別に実施する、②その次にある層を対象として層内の顧客に適応してみる、という方法もあるでしょう。
お客様の貢献度に応じて、お客様に適切なサービスを提供する
すべてのお客様に同一のサービスを提供することは、真にお客様を平等に扱っていることになるでしょうか・・・
すべてのお客様に同一のサービスを提供することは、真にお客様を平等に扱っていることにはならないという考え方があります。前述の2:8ルールは多くの企業様に当てはまります。私のお客様もそうでした。これが正しいとするとこんなことが起きるのでないかという話です。
(例示)
販売促進として割引セールを行おうとします。その原資は上位2割のお客様が多くを負担しています。セールの時には、2割以外のお客様が、例えば日頃はほとんど購買をされないお客様が数多く来店されます。そしてこのお客様はセールが終わると再び来店されなくなります。一方2割の優良顧客のお客様はセールだからと言って無茶苦茶に多くの買い物をされることもなく、次の日からも来店されます。
さて、上記のこの状況は、お客様を平等に扱っているといえるでしょうか。お店にとって優良なお客様にはより高いサービスを、そうでないお客様にはそれなりのサービスを提供する。これがフリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)という販売方法の基本的な考え方になっています。ポイント還元サービスもその一つで、だれも文句は言いません。
以上、とてもざっくりですが分析のイメージや進め方がご理解いただけたでしょうか。
ここに紹介した分析はすでにおなじみの分析もあるでしょうし、あの分析が無い!(ご容赦ください)とも思われるでしょう。
眺めていただきながら、新しい分析の視点・・・「こういう分析をしたいなぁ」・・・「お、アイデアが閃いた」・・・に、なると幸いです。
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